京都・スペイン工芸交流ラウンドテーブル(アーティストトーク)が開催されました。
午前の部ではファッション、ジュエリーの分野から、染色家のキマ・ギタールおよび宝飾工芸家ロック・マジョラルの両氏が、自らの作品について、また、現在の世界的な活躍に至るまでの創作活動の変遷について語り、スライドを用いて解説しました。
キマ・ギタール氏はパリでの修業時代に日本の技法からインスピレーションを受けたことや、すべての世代を対象とする自らのファッション哲学について語りました。
また、ロック・マジョラル氏は、父のエンリック・マジョラル氏が創設した宝飾ブランドについて、その理念や新素材を組み合わせた近年の作品制作の取り組みなどについて解説しました。
それを受けて、日本側からは染色家の本郷大田子氏、および金属工芸家の中村佳永氏が、それぞれの創作活動について説明しました。進行役を務める京都精華大学の佐藤啓二教授は、スペインと日本の工芸家の技法の共通性や相違点について、また、4人の発表には、顧客のニーズにどのように応えるかというテーマが共通していると指摘しました。
午後の部では、建築・芸術などの分野で現代的な展開によって注目される3人の工芸家が登壇しました。
紙工芸家でカペヤデス製紙博物館館長のビクトリア・ラバル氏は、博物館とカタルーニャの紙産業の歴史、そして自らが近年取り組む作品や他の分野とのコラボレーションについて語りました。
和紙造形家の伊部京子氏は、近年のアメリカでの舞台上演の取り組みなどのビデオ上映を糸口に、ラバル氏ら現代の紙作家の活躍の素地を築いた紙工芸運動についても解説しました。
籠編みの技術を用いた植物の建築物で知られるジョアン・ファレ氏は写真のスライドを用いて自らのプロジェクトを解説し、ユニークな取り組みの数々に会場からも驚きの声が上がりました。
続いて登壇した東洋竹工の大塚正洋社長も、京都大学などと共同開発した竹製の電気自動車を映像で紹介しました。
建築陶板の分野で世界的に活躍するトニ・クメヤ氏は、四世代にわたる製陶会社の歴史から説き起こして、自らの代から取り組んだ建築分野でのセラミックの応用を豊富な写真を用いて解説しました。
続いて陶芸家の中野亘氏が自らの陶歴と、器とそれらが置かれる場の響きあいという独自の視点からの陶芸論、近年の寺院など祈りの場でのインスタレーション展示などについて解説し、最後に自作の陶製の笛・土笛の演奏をもってアーティストトークを締めくくりました。