展示解説「豊岡で育てるコリヤナギの一年半」より 「再び訪れた春」
4~5月になると、去年刈り取り冬ごもりを終えた柳は、枝からは新芽、刈り取られた枝の足元からは根が出てきます。再び大地に根付こうとする生命力の強さを伺えます。この時期の新芽と下から映える根が大事な意味を持ちます。柳に再び根が生え、水を吸い上げ成長しようとし、根から送られる水によって新芽を吹き出します。根と葉をつなぐ「水道」が柳の表皮の下にできることで柳の皮が剥ぎやすくなるのです。
「柳の皮剥ぎ」
春の風物詩、柳の皮剥ぎを行います。海外ではこの皮剥ぎは、柳を大きな釜で蒸して剥ぐことも多く、その場合は柳が持つ独特の白肌、別名「植物の象牙」と呼ばれる素肌は生まれません。
春の柳に「水道」ができるまで丹精込めて世話し、やっと皮剥ぎのの時期を迎えます。その作業はすべて手作業。一本一本の柳をフタマタという道具に挟んで一気に引っ張って皮を剥ぎます。皮を剥ぎ、すぐ水洗いする工程が待っています。時間を置くと植物独特のアクが出るので、柳の素肌が濁ってしまいます。皮をある程度(ひと束くらい)剥ぐと急いで近くの水路で洗います。田植えの時期はまだ雪解け水が流れており、手はかじかむほど冷たいです。水につけて丁寧にごしごし洗います。一本一本目でチェックしながら、アクが目立つところは指の肌できれいに撫でて流します。長さ2m以上ある柳を川で腰をかがめ、ひと束約15~20分洗います。本当に手間がかかります。
川で洗ったあとはさっと陽にあてて乾かします。そして、ある程度乾いた柳を並べて干します。朝、陽がでると皮剥ぎを終えた柳を表に干し、夕方日が沈む前には倉庫の中に干す場所を移動します。夜露にあててはいけないからです。この作業がお盆過ぎまで毎日続きます。
皮剥ぎが始まる4月末から作業を終える6月の頃。畑には柳の株から新しい芽が1m50cm程に育っており、また芽摘みを同時進行で進めます。こうして伝統工芸士さんの生活は柳とともに四季を迎え、柳の成長とともに作業を行い、端正こめて編み素材として使えるようになるには1年半かかります。お盆明けて、初めて新しい柳を加工して編むことが可能になります。