【豊岡柳 KAGO展】 展示解説 1

展示解説「豊岡で育てるコリヤナギの一年半」より 「春~夏」

 
春。柳の株から柔らかい新芽がたくさん出てきます。株は数年かけて大きく(太く)なります。植えて一年目の柳は株を育てるのに力を使い、編み素材が取れるまでには数年かかります。柳が青葉のころは虫の害や病気などにもかかりやすく、職人は度々畑に足を運び成長を見守ります。
夏。2mを超える高さに育ち葉も茂り風に吹かれています。この頃もまだ芽摘みは続いています。背丈が2mを超え始めると畑の中心には日光が届きにくくなり、風もこもりがちにになります。その中にわけ行って背伸びしながら高い柳の芽摘みをします。
夕方、陽が沈みはじめたくらいから虫の音を聞きながら柳と語らいます。ざわざわ揺れる柳は海原のようで酔いそうにもなります。夏は全国でも有名なくらい暑い豊岡。
柳が枯れないように水を与える作業も加わります。家族の協力なしには柳畑の世話はできません。
「柳は山や川に自生しているものを使っているのでは?」という質問を受けますが、豊岡では職人が自ら柳を栽培し、手間と愛情をかけ育てています。自生したものは曲がっていたり、節ができて行李を編むのに適さない場合が多いのです。
豊岡の柳の伝統は「柳細工」という技法だけでなく、素材となる良質の柳を育てるというところから始まります。農業と工芸を併せ持つ、とても稀少な伝統的工芸といえます。
春は柳が一番成長するときで、たくさんの新芽がぐんぐん伸びます。5月くらいにはあっという間に1m50cmくらいまで伸び、脇芽もたくさん出てきます。
職人は畑に出ては、必要な素材を考えながら芽摘みをします。節のない長い柳が必要な場合は芯になる柳を決め、新芽はどんどん摘みます。編む籠によっては「籠の柱役」となるタテリが必要となります。このタテリとなる2mmくらいの細長い柳の枝が必要となる場合は、選んだ新芽を育てるように芽摘みし伸ばします。爪楊枝くらいの小枝が必要なこともよくあります。その場合もその枝が育つように工夫して成長させます。
春の畑が来年使える素材を揃える一番大事な調整をするときです。

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